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2025-05-01 20:41:00

日本型銀行機能の進化

2025年4月、三井住友フィナンシャルグループ(FG)とフィンテック企業マネーフォワードが、新たな銀行の設立に向けた検討を開始したと発表しました。

両社は50%ずつ出資する準備会社を設立し、具体的な事業内容について協議を進める、とあります。マネーフォワードが提供する会計ソフトなどのSaaSに銀行機能を「統合」し、利用者にとってよりシームレスな金融機能を提供するとしています。

この背景には、金融サービスが従来の「窓口型」から「埋め込み型」へと変化している現状があります。

ユーザーは、日々の業務やアプリケーションの延長線上で、自然に金融サービスを利用できることを求めています。特に中小企業の現場では、資金移動や融資などの手続きが煩雑であるため、SaaSと銀行機能が一体化することにより大幅な業務効率化が期待されるのです。いわば日本型のBaaS(Banking as a Service)ですね。

ところで、こうした動きは、欧米ではAPI(組み込み型プログラム)を通じて銀行機能を提供し、裏方として金融サービスを支えるスタイルが主流になっています。

たとえば、Stripe Treasury(アメリカ)やSolarisbank(ドイツ)などでは、銀行のライセンスを持ち、API(組み込み型プログラム)ベースで口座開設やカード発行、融資、KYC(本人確認)などの機能を提供しています。このAPIを自社のアプリに組み込むことで、スタートアップやEC企業は、迅速かつ低コストで金融機能を自社のサービスに取り込むことが出来るわけです。

一方、日本ではUIやUXを重視し、アプリケーションに銀行機能を直接組み込むアプローチが多いようです。これは、資本金20億円以上や、コンプライアンス整備など、厳格な金融規制があったり、顧客の信頼性を重視する傾向、さらには企業のIT内製力の課題、といった日本特有の事情によるものでしょう。

さらに、こうした自社アプリへの銀行機能追加の、次の段階として注目されるのが、中小企業の資金ニーズとSaaSデータを活用した「信用スコアリング型融資」、いわゆる信用格付け融資です。

会計データ、請求書、給与支払い履歴など、たとえば今回の例ではマネーフォワードが蓄積する実データを活用することで、従来の財務諸表に依存しない、よりリアルタイムな信用評価が可能になります。

そしてこれが実現すれば、中小企業の資金調達がより柔軟かつ迅速になって、事業成長を後押しすることになります。期待したいですね