ブログ

2025-06-18 16:40:00

決算書があてにならない?

知り合いと話していたら、最近「粉飾決算」「不正会計」が多いという話を聞きました。特に成長期にある企業は、周囲の期待に応えなければならないというプレッシャーが強く、なにかと見栄えの良い発表をしがちなんだそうです。でも、会社をやっていれば良いときも悪いときもあるものですし、その都度、正直に状況を情報開示してくれないと、私たち投資家はとても困ってしまいます。

そんなわけで、少し調べてみました。

最近有名になった事案では、AI関連のサービスを手がける株式会社オルツですね。2024年12月期の売上約60億円のうち、およそ7割にあたる40億円以上が実態のない循環取引だった可能性があるとして、2025年4月に証券取引等監視委員会(SESC)の強制調査が入りました。

出典:朝日新聞「急成長のAI企業、売り上げ7割水増しか」
https://www.asahi.com/articles/AST642444T64UTIL041M.html

この発表直後、同社の株価は4分の1にまで下落し、現在も第三者委員会による調査が続けられています。

こうした事態を防ぐには、やはり仕組みそのものを見直していくしかありません。まず考えられるのは、年1回の監査に頼るのではなく、月次や日次単位で数字を点検できるようにする「リアルタイム監査」の導入です。最近ではAIで異常な売上や経費の動きを検知する技術も進んでおり、不正経理処理の感知も現実的になってきました。

また、2024年から完全義務化された「電子帳簿保存法」も有効な対策の一つです。仕訳帳や総勘定元帳などの会計データは、訂正・削除の履歴が残る形で保存することが求められており、帳簿改ざんのハードルは確実に上がっています。

出典:OBC「電子帳簿保存法の改正内容と2024年対応」
https://www.obc.co.jp/360/list/post189

特に有効なのは、内部からの声がきちんと届く体制だと思います。上場企業であればそれなりに社員数は存在するでしょうし、自浄作用も期待できるはず。企業ごとに匿名通報の窓口を設け、独立行政法人みたいな外部の独立した機関がそれを運用すれば、告発者が守られる環境を整えることが可能でしょう。実際、過去の粉飾の多くは社内の勇気ある通報によって明るみに出たものです。

最後に、私たち投資家自身も決算書だけに頼らず、キャッシュフローや業界全体の動きと照らし合わせながら、慎重に企業を見ていく必要があると思います。これに関しては、つい数字だけを追いかけがちな、自分への戒めとして考えたいと思っています。

2025-05-01 20:41:00

日本型銀行機能の進化

2025年4月、三井住友フィナンシャルグループ(FG)とフィンテック企業マネーフォワードが、新たな銀行の設立に向けた検討を開始したと発表しました。

両社は50%ずつ出資する準備会社を設立し、具体的な事業内容について協議を進める、とあります。マネーフォワードが提供する会計ソフトなどのSaaSに銀行機能を「統合」し、利用者にとってよりシームレスな金融機能を提供するとしています。

この背景には、金融サービスが従来の「窓口型」から「埋め込み型」へと変化している現状があります。

ユーザーは、日々の業務やアプリケーションの延長線上で、自然に金融サービスを利用できることを求めています。特に中小企業の現場では、資金移動や融資などの手続きが煩雑であるため、SaaSと銀行機能が一体化することにより大幅な業務効率化が期待されるのです。いわば日本型のBaaS(Banking as a Service)ですね。

ところで、こうした動きは、欧米ではAPI(組み込み型プログラム)を通じて銀行機能を提供し、裏方として金融サービスを支えるスタイルが主流になっています。

たとえば、Stripe Treasury(アメリカ)やSolarisbank(ドイツ)などでは、銀行のライセンスを持ち、API(組み込み型プログラム)ベースで口座開設やカード発行、融資、KYC(本人確認)などの機能を提供しています。このAPIを自社のアプリに組み込むことで、スタートアップやEC企業は、迅速かつ低コストで金融機能を自社のサービスに取り込むことが出来るわけです。

一方、日本ではUIやUXを重視し、アプリケーションに銀行機能を直接組み込むアプローチが多いようです。これは、資本金20億円以上や、コンプライアンス整備など、厳格な金融規制があったり、顧客の信頼性を重視する傾向、さらには企業のIT内製力の課題、といった日本特有の事情によるものでしょう。

さらに、こうした自社アプリへの銀行機能追加の、次の段階として注目されるのが、中小企業の資金ニーズとSaaSデータを活用した「信用スコアリング型融資」、いわゆる信用格付け融資です。

会計データ、請求書、給与支払い履歴など、たとえば今回の例ではマネーフォワードが蓄積する実データを活用することで、従来の財務諸表に依存しない、よりリアルタイムな信用評価が可能になります。

そしてこれが実現すれば、中小企業の資金調達がより柔軟かつ迅速になって、事業成長を後押しすることになります。期待したいですね

2025-04-12 01:24:00

アニメ『Summer Pockets』への出資をさせていただくことになりました。

2025年4月7日から放送が始まる、アニメ『Summer Pockets』への出資を決定しました。

TVアニメ『Summer Pockets』公式サイト

この作品は元々私が設立した会社の企画であるため、自然な流れで関わることとなったわけですが、内容的には少しビジュアルノベル的な要素もあり、アニメ作品としては好き嫌いが分かれるかもしれません。とはいえ、魅力ある作品になっておりますので、ご興味のある方はぜひご覧いただければと思います。

ところで「アニメ製作委員会」という言葉を耳にされた方も多いと思います。これは、複数の企業が資金を共同で持ち寄り、各社がそれぞれの得意分野や役割を分担しつつ、共同でアニメ作品の制作資金提供や、プロモーション展開を推進するための組織のことを指します。

一般的な例としては、出版社やアニメ制作会社を中心に、幹事会社、テレビ局、音楽レーベル、玩具メーカー、配信サービス業、さらには原作の権利元などが参加するケースが多くあります。もともとアニメ事業は投資回収のリスクが非常に高い分野だったため、こうした複数企業が資金を分散してリスクを軽減し、円滑な制作資金の確保を図る仕組みが必要とされたのですね。

しかし、近年では日本のアニメが世界的に高い評価を得て、品質面での圧倒的な進化や、国際的な市場の広がりを背景に、アニメそのものが魅力ある投資対象として注目を浴びるようになっています。ただ注意が必要なのは、制作委員会に参加するには資金提供に加えて組合員としての法的資格や明確な役割分担を求められることが多く、単に資金提供だけでは参加が難しいこともあります。そのため、アニメへの出資を検討する際には、こうした条件を十分理解し、役割分担の内容を明確にした上で判断することが求められます。

2025-02-21 13:22:00

不確実性の上昇

どうも気持ち悪いですね。現在の米国株市場は「不確実性の上昇」と「投資家の楽観」という相反する要素が共存しているように見えます。トランプ大統領の関税政策が市場の不確実性を高めて、不確実性指数(EPU)は2019年以来の高水準に達しているにもかかわらず、株式市場は上昇を続けています。これは、投資家が「関税は実施されるが、そこまで厳しくはならない」と楽観視していることを示しています。しかし、このような楽観バイアスは過去に何度も市場の急落を招いてきました。

特に懸念されるのは、VIX(ボラティリティ指数)先物の売り越しが16週連続で続いている点です。これは、投資家が「市場の安定が続く」と確信していることを意味しますが、過去のデータを見ると、こうした極端な売り越しの後には市場の急落が発生しやすい傾向にあります。例えば、2019年の米中貿易戦争の激化時や、2020年のコロナショック前にも、VIXの売り越しがピークを迎えた後に市場が大きく調整しました。

こうした状況では、リスク資産からの資金シフトを検討するのも有効な戦略です。具体的には、安全資産である金の現物や金のETF、国債などへの分散投資を進めることで、ポートフォリオの安定性を高めることができます。特に金は、地政学リスクやインフレヘッジの手段として注目されやすく、EPUが上昇する局面では買われる傾向にあります。また、債券市場もリスク回避の流れが強まれば需要が高まり、特に米国債などの安全資産が買われる可能性が高いです。

重要なのは、現在の市場が「関税リスクを正しく織り込んでいるのか」を冷静に判断することだと思います。もしもトランプ関税が予想以上に厳しく、または長引く場合、市場は急落し、リスク資産から安全資産への資金移動が加速するでしょう。現在の楽観ムードは結構ですが、金や債券といった安全資産を活用することで、リスク管理を徹底することが求められます。

(クリプト資産? そろそろかも、ですね)

2025-02-04 19:13:00

DeepSeekショック

2025年1月末の時点でアメリカの株式市場が大きく下落しています。ダウ平均株価は一時前日比で600ドル超の下落を見せ、NASDAQも大きく値を下げています。

この急落の背景には、中国のAIスタートアップ企業ディープシーク(DeepSeek)が発表した新しいオープンソースのAIモデル「R1」による衝撃があるようです。

このモデル、OpenAIのChatGPTと同等かそれ以上の性能でありながら、必要なGPUは半分ほど、コストは1/1000ですむという、画期的なものなんですね。これにより、特に半導体産業を中心に成長を続けてきたアメリカ市場に動揺が広がりました。

皆さんもご存知のように、アメリカの株価を押し上げてきた中心的存在の一つが半導体メーカーで、その中でもエヌビディア(NVIDIA)はAI分野での需要増に支えられて過去最高値を更新してきました。

しかし、エヌビディア製の先端半導体である「A100」やその後継モデルは、米国政府の輸出規制により中国への提供が制限されています。この規制により、中国市場には性能が約半分に抑えられた低性能なモデルしか流通していない状況です。にもかかわらず、ディープシークはその制約下でR1を開発し、ChatGPTと遜色ない性能を実現したわけです。

この結果、「AIモデルの開発にはエヌビディアのような最先端半導体が必ずしも必要ではないのではないか」という疑問が急浮上し、半導体株全般に影響を与えています。

とはいえ、実はディープシークが現在約5万台ものA100を保有しているとの情報も話題を呼んでいます。これは同社の創業者リャン・ウェンフェン氏がかつて設立したヘッジファンド「ハイフライヤー」による先見的な調達が背景にあると言われていますが、詳細は依然として不透明です。

この一連の出来事が示唆するのは、アメリカ市場がAIとそれを支える半導体産業に大きく依存している一方で、AIの進化においてはハードウェアよりもアルゴリズムや効率性が重要である、ということです。しかも中国は基本オープンソースで常にアルゴリズムを開示しているので、ちょっとした進化が一気に世界に伝播する可能性を示しています。

(意識高い系の人がよく使う、パラダイムシフトってやつですね。)

1 2