トランプ関税は製造業の知財化戦略のチャンス?
どうやら日本はこのままだと25%の関税になりそうな気配ですね。これはもう、私などがあれこれ言うような問題ではないと思うのですが、この一連の騒動を見て私なりに思ったことを少し書いてみることにします。もちろんつっこみは歓迎です。
そもそも論として、巨大な市場を持つ独立国家が貿易赤字を嫌うのは、極めて自然な経済的防衛反応だと思うのですね。たとえば米国がトランプ政権のもとで強化している関税政策も、感情的な保護主義と見ることもできますが、国内産業と雇用を守るという観点では、ごく合理的な選択と捉えることもできます。たとえ日本のような同盟国であっても、自国の製造業を圧迫してまで外国製品を受け入れるべきではない、という考え方は一定の説得力を持っています。
という視点に立てば、今後の国際ビジネスにおいて「現地で作り、現地で売る」ことは不可欠の条件となります。特に資源を持ち、国内での付加価値創出を重視する国々においては、自国雇用を生む企業活動こそが歓迎されるからです。現地での製造拠点を整え、販売とサービスまで完結させることが、その国家との長期的な協調関係を築くことになります。
この点で先行しているのが中国企業とも言えます。
中国はメキシコをはじめとする新興国において、既に製造・組立・物流の一体運用を進めています。BYDなどは現地生産を基軸とし、雇用を創出することで政治的な抵抗感を減らし、製品の地場化を成功させています。また日本企業もようやくこの戦略に追随しつつあり、今後は「輸出」から「現地経済への埋め込み」への転換が進むことが期待されます。
ただし、そうした場合、当然ながら現地での納税が優先されるので、親会社が収益を吸い上げられないのではという懸念も生じます。そこで参考になるのが、AmazonやGoogleなど、米国の多国籍企業が採用している「知財ベースの収益モデル」です。製品は現地で作っても、設計・ブランド・技術・システムなどの知的財産権は本社に残し、使用料やライセンス料という形で安定収益を確保する手法です。これによって現地法人は適正な利益を残しつつ、本社には継続的なキャッシュフローが戻る構造を実現しているのです。
結局のところ、貿易問題の本質は「モノの移動」ではなく「雇用と税収」にあります。だからこそ、現地で製造し、現地に税を納め、そして本社は知的価値で報われるという三層構造を構築することが、日本企業にとって今後の生き残り戦略となるのではないでしょうか。
(じゃあ日本の工場はどうすべきか。おそらく、そこには別の産業を興すのが正解でしょうね。AIのOSを共通化した精密ロボットや宇宙産業のような……)