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2025-11-13 15:05:00

『一億円の壁』とは?

「一億円の壁」という言葉を最近ニュースでよく聞きます。これは「年収が一億円を超えるあたりから、なぜか税負担率が下がる」という現象のことを指します。いかにも金持ち優遇のように聞こえますが、ミスリードとの噂もあり、本当はどうなんでしょうか。

普通、サラリーマンの給料は「総合課税」といって、所得が上がるほど税率も上がる累進課税。最高税率は所得税45%+住民税10%で、合わせて約55%にもなります。ところが、株や投資信託の売却益、配当金、利子といった「金融所得」は「分離課税」で一律20.315%。つまり、収入の大半を金融所得で得ている人ほど、全体の税率(実効税率)が下がる仕組みです。

たとえば、年収5,000万円の会社員は税金でおよそ半分が消えますが、同じ5,000万円を株の売却益で得た投資家は税率20%ほど。こうして「一億円の壁」が見えてくるわけです。とはいえ、誰でも一億円を超えたら得する、という単純な話ではありません。給与収入が中心なら、むしろ負担は増え続けます。「ミスリードだ」と言われるのはこの点です。

最近はさらにややこしく、金融所得には金などの売買益、ビットコインなどデジタル資産の譲渡益も含まれます。これらは今のところ雑所得扱いで最大55%課税されので、「投資の種類次第で課税ルールがバラバラ」というのが現状です。

一方で、富裕層への増税には一定の正当性があると私は思います。国税庁の統計によれば、所得一億円超の人は全納税者のわずか0.1%ですが、納税額全体の約15%を占めています。社会の基盤を支える層として、もう一歩踏み込んだ貢献を求めるのは自然な流れでしょう。ただし、増税一辺倒ではなく、「目的別に税控除付き寄付を認める」など、社会貢献と税制を結びつける柔軟な仕組みが理想だと思います。

世界に目を向けると、アメリカでは「ミニマムタックス(最低税率制度)」を導入し、フランスでは富裕税(ISF)が導入されました。いずれも「超富裕層だけは最低でもこれだけ税を払うべき」という考え方です。日本もこうした流れに近づきつつあります。

注意が必要なのは、市場への影響でしょうか。税制が急に変われば、富裕層がETFや株式から現物資産、REIT、不動産などへ資金を逃がす可能性があります。結果的に資本市場が冷え込み、経済全体の活力を落とす可能性もあります。

結論: 富裕層には増税すべし。ただし税制構造のゆがみは是正されるべき。