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2026-03-16 17:04:00

ソフトウェア産業のゆくえ

■好況と言われるソフトウェア業界で倒産が増えているよう。帝国データバンクによれば、ソフト受託開発とパッケージソフトを含むソフトウェア業の倒産件数は2025年度2月までに195件に達し、過去10年で最多だった2024年度と同水準となりました。激変の時代なので、微妙に古いこのデータは「今」を反映していないかもですが、ただ、倒産した会社の約84%が負債1億円未満の小規模企業というのは、ちょっと気になりました。

日本のIT企業数は約4万社。これは人口や市場規模を考えるとかなり多い部類に入ります。たとえば米国は日本の数倍ですが、大企業への集中度はむしろ高い。一方、日本では大手SIer(企業のITシステムを「設計・開発・導入・運用」までまとめて請け負う会社)の下に一次請け、二次請け、三次請けと続く多重下請け構造があって、受託開発を担う中小企業が大量に存在しています。この部分が今回の倒産増のクラスタなのです。

原因は主に3つ

1. 人手不足
帝国データバンクの調査では、情報サービス業で正社員の人手不足を感じる企業は約69%に達しています。IT産業は人材がそのまま生産力になるので、エンジニアがいなければ案件があっても受注できず、売上が伸びません。しかも厚生労働省の統計では、情報サービス業の平均給与は月38万円を超え、全産業平均より大きく高い水準です。賃上げ圧力は特に体力のない中小企業を直撃します。

2.下請け・孫請け企業に回る仕事の構造変化
クラウドやSaaSやAIの普及によって、従来のようにシステムを一から開発する案件が減り、少人数で構築できるケースが増えました。米AmazonのAWS、米MicrosoftのAzure、米Salesforceなどのサービスを組み合わせることで、開発工程の一部が置き換えられています。さらに生成AIの登場により、GitHub CopilotやCursorなどのツールを使えば開発効率は大きく上がります。その結果、従来のように多層の下請け企業を必要としない構造に変化しているのです。

3.料金体系
実は、日本のIT産業の最大の特徴は「SES」と呼ばれる人月ビジネスです。システムそのものを売るのではなく、エンジニアの労働時間を見積に反映するので、結果的に人月計算でお金を取っています。これは海外ではあまり見られない商習慣ですが、その遠因はおそらく公官庁の積算システム(昔は積算手帳なるものをお役人みんなが持ってましたね)にあると思います。AIによる生産性向上やクラウド化が進めば、このモデルでは売上が必然的に縮小していくので、その影響は多大だと思います。

ではどうすればよいのでしょうか。

方向性は比較的明確です。AIを積極的に取り入れて生産性を高めること、そして受託開発から自社サービスへと軸足を移すことです。特に有望な分野としては、高齢化社会を背景に需要が拡大するヘルスケアIT、女性向け健康サービスであるフェムテック、そして資産運用を支援する投資テックなどが挙げられるでしょう。自社のサービスであれば、KPIも明確で収益性も担保されます。なによりダメになればすぐ次のサービスへと移行することもできます。

下請け構造に甘んじて現在の売上に安閑とせず、今のうちにアイデアを蓄積して心のアンテナをピンと立て、自社サービスやアプリの開発に向かう。日本のIT業界は今、そういう大きな再編の入り口に立っている気がいたします。