生きのこる書店
帝国データバンクが7月6日に公表した調査によると、2025年度に赤字となった書店は全体の38.7%、業績悪化は69.7%に達したそうです。全国の書店数も9993店と初めて1万店を割りました。これはさもありなん、と思いきや、同じ帝国データバンクの調査で、24年度に増益となった書店が約4割と、過去10年で2番目の高水準でもあったそうです。沈む業界の中で、なぜ4割は増益なのか。今回は思考実験的に、上場書店の決算でこの謎を検証してみました。
まずは中部地盤の三洋堂ホールディングス(3058)です。26年3月期第3四半期は売上高が前年同期比で2.2%増にとどまる一方、営業利益は1億600万円と同220.3%増(!)、直近3カ月の売上営業利益率は1.3%から3.7%へ改善しました。この中身を見ると、前期実績ですが、本業の書店部門は6.9%減収なのに対し、トレカ部門は10.7%増、新規事業は26.7%増。さらにデュエルスペース付きの「トレカ館」を25店舗、中古ホビーの駿河屋併設店を5店舗まで広げ、顔認証で入店する無人営業店も14店舗に達しています。つまり、増益の中身は本ではなく、本の棚を削って入れた別商材と省人化ということです。また、新潟地盤で蔦屋書店を展開するトップカルチャー(7640)も、26年10月期中間で営業黒字に転換しましたが、牽引したのはやはり本ではなく、タリーズとトレカ事業でした。
一方、本そのもので利益を向上させる実験も進んでいます。紀伊國屋書店、CCC、日販が設立したブックセラーズ&カンパニーは、取次を介さず出版社と直接取引し、返品リスクを書店が引き受ける代わりに粗利率を従来の22%程度から29%台へ改善。参加書店の店頭売上は全国平均を5.7~11.6%上回る月もあり、同じ本を売っても、取引の設計次第で利益が変わることを示しました。この5月には参加15社が「売上10%成長・返品率20%・粗利30%」の共同声明まで出したそうです。
こうして並べると、どうやら増益4割の正体が見えてきますね。
本を集客装置と割り切って高粗利商材で稼ぐ店と、流通の仕組み自体を作り替えて本の粗利を上げる店。赤字38.7%は、そのどちらにも踏み出せていない中間層、というのが決算数字から導ける仮説です。(まあ増益書店全体の内訳統計は存在しないので、これはあくまで推論でしかありませんが……)。
で、私が面白いと思うのは、この二極化が書店を「実験場」に変えつつあることです。無人営業、買い切り型流通、対戦スペースという体験課金。このままではジリ貧という切迫感が、全国1万店弱のリアル拠点で、小売の新しい収益モデルのA/Bテストを同時多発的に走らせているのだと思います。書店の未来は、中間流通費の除外、さらには出版物をエンタメ化して、その上で高付加価値商品を販売する実験にかかっているのかもしれません。てことで、次に本屋へ寄ったら、棚の減った分に何が入ったかを見てみてください。
