ゲーム会社に残された時間は少ない
今日は私の古巣であるゲームの話をしましょう。4~6月期のゲーム各社の決算では、リピート販売の好調さが目立ちました。カプコンの「バイオハザード」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY」、セガサミーの「ペルソナ」など、過去作品が再び売れています。これは旧作人気がある、というだけではなく、ゲーム会社が「新作を売る会社」から「IP(コンテンツ)を使って何度も稼ぐ会社」へ、いわばIPの資源化に成功しつつあるからです。
ところで、IPを資源化するために必要なのは、次のような施策です。
1.まずは名作をつくる
2.旧作をデジタルで何度も売れる状態にする
3.派生商品やイベントにより世界観・キャラクターを長期間維持する
4.ファンダム(信者層コミュニティー)に物語を提供する
これからは、その先のAIによる、ゲームそのもののパーソナル化があるかもしれませんね。例えばRPGなら、プレイヤーの性格や過去の行動によってNPCの会話、仲間との関係、敵の強さ、街の歴史、事件、恋愛、結末までリアルタイムで変わる。極端にいえば、100万人が遊べば100万通りの「自分専用FF」や「自分専用バイオ」が生まれる世界です。
ただし、これは無料ではありません。数千万人のユーザーに高度な生成AIを常時動かせば、推論計算量は膨大になり、ゲームは一気に「AIリッチ」な産業になります。それでも、大手ゲーム会社はいずれ外部AIを借りるだけでは足りなくなり、自社IP専用のAI基盤を持つ方向へ進むと思います。
幸い、任天堂、ソニー、カプコン、コナミ級なら、今の収益力と時価総額を考えれば数百億~1,000億円単位の投資も不可能ではありません。1,000億円あれば、最新GPUを5,000~1万基、70~140ラック程度備え、10兆~30兆トークンを学習するゲーム専用AI基盤も視野に入ります。ChatGPTと正面から競う必要はなくて、ゲームという限定領域で世界最高のAIを作ればいいのです。
こうした独自AIなら、自社IPの全設定、台詞、世界観、過去作品を学習・管理し、権利問題やブランド毀損も抑えられます。そして何より、「外部AIにゲームを作らせた」のではなく「その会社自身が作ったAI」であれば、クリエイターにもユーザーにも受け入れられやすいはず。AI利用の大義名分が初めて立ちます。
また、長期的には人間の労働時間が減り、AIによって余暇がさらに増える可能性があります。私もコロナの時に急にダウンロード販売が4倍になって驚いた経験がありますが、人間ヒマになれば余暇の時間をゲーム、動画、SNS、旅行が奪い合うものです。
一方で、5年ほど先には、個人自身がAIで自分に合った娯楽――小説や漫画、映画、ゲームを作る時代も来るでしょう。
しかし、それでもIPは残ると思います。人間は「個」では暮らせない動物だからです。完全に一人ひとり違う物語になれば、みんなで語る共通体験がなくなり、ファンダムも形成されにくい。「自分だけの世界」は欲しいが、「みんなが知っている世界」の中で遊びたい。そこに既存IPの強さがあります。
とおいうわけで、ゲーム会社に残された時間は意外に短いのです。
今後2~5年で、IPを資産化し、自社AIを持ち、「同じゲームを全員に売る会社」から「IPを使って一人ひとりに違う世界を提供する会社」へ進めるか。そこが次の勝敗を分けると思います。
